1. 「売上」と「手取り」はまったく別のお金
「月の売上50万円」と聞くと会社員の月給50万円と同じに感じますが、実際に手元に残る金額はまったく違います。 軽貨物の一人親方は個人事業主なので、売上からすべての費用と税金を自分で払うからです。
しかも軽貨物の業務委託では、報酬が源泉徴収されずに全額振り込まれることが一般的です。 会社員のように「引かれた後の金額が入る」のではなく、「まだ何も引かれていない金額が入る」。 ここを取り違えると、確定申告の時期に払えなくなります。
2. 手取りまでの2段階
手取りは、売上から2段階で引いて求めます。
| 段階 | 計算 | 意味 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 売上 − 経費 = 所得 | 確定申告で申告する利益。税金の計算のもとになる |
| 第2段階 | 所得 − 税金・社会保険料 = 手取り | 実際に自由に使えるお金 |
多くの人が第1段階だけで考えて「売上50万 − 経費20万 = 30万が手取り」と思ってしまいますが、 そこからさらに税金と社会保険料が引かれます。第2段階を忘れないでください。
3. 第1段階:売上から引く経費
軽貨物で毎月出ていく代表的な経費です。勘定科目と一緒に把握しておくと、 そのまま確定申告の集計になります。
| 費目 | 勘定科目 | 発生のしかた |
|---|---|---|
| ガソリン代 | 燃料費 | 毎日。走行距離に比例する最大の変動費 |
| 高速・駐車場 | 旅費交通費 | 案件によって大きく変わる |
| 車両のリース料 | リース料 | 毎月固定(購入の場合は減価償却) |
| 整備・車検・タイヤ | 修繕費 | 不定期にまとまった額が出る |
| 自賠責・任意・貨物保険 | 保険料 | 更新時にまとまった額が出る |
| スマホ・通信 | 通信費 | 毎月固定(私用と兼用なら按分) |
| 台車・作業着・消耗品 | 消耗品費 | 少額だが積み上がる |
経費の全体像と勘定科目は経費一覧の記事で、 車両購入の扱いは減価償却の記事で詳しく解説しています。
4. 第2段階:所得から引く税金と社会保険料
所得が決まると、そこから次のようなものが引かれます。 金額は所得額・家族構成・自治体・加入状況によって大きく変わるため、本記事では税額を断定しません。
- 所得税 — 確定申告で計算し、申告期間中(原則2月16日〜3月15日)に納付
- 住民税 — 申告内容をもとに翌年6月以降に請求が来る。1年遅れで来るのが要注意
- 国民健康保険料 — 前年の所得をもとに算定される。こちらも1年遅れ
- 国民年金保険料 — 定額(免除・猶予の制度がある)
- 個人事業税 — 業種・所得額により課される場合がある
- 消費税 — 売上規模やインボイス登録の有無によって納税義務が生じる場合がある
具体的な税率・控除・納付額の計算は個別事情によって変わります。 本アプリでも「経費を計上すると戻ってくる額の目安」として概算の割合を用いた表示は行いますが、 これは目安であって申告額ではありません。実際の税額は税理士・税務署にご確認ください。
毎月の手取りを、月末に確認する
ドライバーパスポートは売上と経費を記録すると、月次で差引を集計します。 「今月いくら残ったか」を毎月見る習慣がつくと、確定申告が集計作業ではなく確認作業になります。 データは端末の中だけに保存され、外部には送信されません。
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5. 手取りを増やす3つの方向
① 経費を取りこぼさない(すぐ効く)
同じ売上・同じ働き方でも、記録の精度だけで所得が変わります。 レシートを失くした経費は存在しなかったことになるので、 ここは努力ではなく仕組みで解決すべきところです。支払ったその場で記録するのが最も確実です。
② 稼働あたりの単価を上げる(交渉の材料が要る)
同じ時間でより多く運ぶか、単価の高い案件に移るか。 ここで効くのが荷待ち時間の記録です。30分以上の荷待ちを日報に残しておくと、 「実際にはこれだけ拘束されている」という客観的な材料になり、条件交渉の根拠になります。
③ 失注しない(見落とされがち)
手取りを最も大きく減らすのは、実は税金ではなく仕事が止まることです。 元請や配送プラットフォームは委託先のコンプライアンス状況を確認するようになっており、 記録を提示できないことが取引停止の理由になりえます。月の売上が止まる損失は、 多くの一人親方にとって数十万円規模です。
6. 入金があった日にやること
手取りを守る運用は、入金日の3ステップに集約できます。
- 入金額を売上として記録する(後でまとめて思い出すのは無理があります)
- 税金・保険料の分を、生活費とは別の口座に分けておく(割合は税理士に相談して自分の水準を決める)
- その月の経費と突き合わせて、残った額を確認する
この3つを毎月やっているかどうかで、確定申告のときの負担も、 納税時期の資金繰りも、まったく変わります。
7. よくある質問
売上から何を引けば手取りになりますか?
大きく「経費」「税金・社会保険料」の2段階を引きます。まず売上から燃料費・保険料・修繕費などの経費を引いたものが所得で、そこから所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金保険料などが引かれた残りが、実際に自由に使えるお金です。
報酬は源泉徴収されていますか?
軽貨物の業務委託では源泉徴収されないことが一般的です。つまり振り込まれた金額から税金がまだ引かれていない状態なので、そのまま生活費として使うと確定申告のときに支払えなくなります。取引先や契約内容によって扱いが異なるため、支払明細を確認してください。
税金はいくら取っておけばいいですか?
税率は所得額や控除の状況によって変わるため、本記事では税額を断定しません。アプリでは所得税と住民税の合算のおおよその目安として20%を用いて「経費を計上すると戻ってくる額の目安」を表示していますが、これは概算であり申告額ではありません。実際の税額は税理士または税務署にご確認ください。
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出典
- 国税庁 https://www.nta.go.jp/
- e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/