1. 結論:一人親方にも安全管理体制が求められるようになった
2025年4月1日に施行された改正貨物自動車運送事業法(改正物流法)により、 貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)にも安全管理体制の整備が義務づけられました。 車両1台、従業員なし、副業での稼働であっても、免除はありません。
これまで黒ナンバーは、緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業)と比べて規制が緩やかで、 車両1台から届出だけで開業できる制度でした。その参入のしやすさが EC の拡大にともなう配送需要を支えてきた一方で、事故件数の増加という問題を生みました。 今回の改正は、その対策として緑ナンバーの「運行管理者」に相当する仕組みを持ち込んだものです。
2. 何が変わったのか
| 項目 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 貨物軽自動車安全管理者の選任 | 講習を受けた者を選任し、運輸支局へ届出。選任後は2年ごとに定期講習 | 2027年3月31日(既存事業者) |
| 指導監督・特別な指導 | 年1回の一般的な指導監督(12項目)、初任・高齢・事故惹起運転者への特別な指導 | 2028年3月31日 |
| 適性診断 | 初任・適齢(65歳以上)・特定の運転者が対象 | 2028年3月31日 |
| 運転者等台帳 | 法定5項目を記載して備え置く | 施行済み |
| 事故の記録・報告 | 法定6項目を記録。重大事故は30日以内、特に重大な事故は24時間以内に速報 | 施行済み |
加えて、以前から求められている点呼・日常点検・業務記録(運転日報)が引き続き必要です。 改正で新たに加わった部分だけを見ていると、足元の記録が抜けたままになります。
3. 期限は2つある。混同しない
2028年3月31日=指導監督・特別な指導の期限
この2つは別の期限です。「2028年まで猶予がある」と誤解すると、安全管理者の選任に間に合いません。
2025年4月1日以降に新規開業する場合は、経過措置の対象外です。 事業開始までに安全管理者の選任が必要になります。
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4. 記録の保存期間が種類ごとに違う
この制度で実務的に一番ややこしいのが、記録の保存期間が揃っていないことです。
| 記録 | 内容 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 点呼記録 | 乗務前後の酒気帯び確認、健康状態、指示事項 | 1年 |
| 業務記録(運転日報) | 法定8項目。荷待ち・荷役の記録を含む | 1年 |
| 事故記録 | 法定6項目。原因と再発防止対策まで | 3年 |
| 指導監督の記録 | 年1回の一般的な指導監督、特別な指導 | 3年 |
| 運転者等台帳 | 法定5項目。初乗務日、事故歴、適性診断の受診状況等 | 備え置き |
5. 一人事業者が最初にやる3つ
全部を一度にやろうとすると手が止まります。順序をつけると次のようになります。
- ① 安全管理者の講習を予約する — 定員があり、期限が近づくほど取りにくくなります。 受講から届出まで日数もかかるため、これが最優先です
- ② 点呼・日常点検・運転日報を毎日つける習慣にする — 監査で最初に見られるのがここです。 過去に遡って作ることはできません
- ③ 期限を一覧にする — 講習(2年ごと)、適性診断、自賠責、任意保険、健康診断。 別々に走っているので、どこかで必ず抜けます
6. よくある質問
副業で月に数回しか走っていない場合も対象ですか?
対象です。稼働日数や売上規模による免除はありません。貨物軽自動車運送事業の届出をしている以上、義務が生じます。
やらなかった場合、どうなりますか?
罰則や行政処分の対象になり得ます。ただし実務上より重いのは取引への影響です。 元請や配送プラットフォームは委託先のコンプライアンス状況を確認するようになっており、 記録を提示できないことが取引停止の理由になり得ます。月の売上が止まる損失は、罰金より大きくなります。
どこで正式な情報を確認できますか?
国土交通省の公表資料が一次情報です。個別の判断は、管轄の運輸支局にご確認ください。 本記事の内容は2026年8月時点の公表資料に基づいています。
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出典
- 国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html
- 国土交通省「統計情報(自動車関係)」 https://www.mlit.go.jp/statistics/details/jidosha_list.html
- 国土交通省 関東運輸局「貨物軽自動車運送事業者数及び車両数の推移」 https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000283375.pdf
- e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/